私の勤めている会社には「バイク隊」なる組織が存在します。
会社の中の「災害なんちゃら本部」という組織の一部で、地震発生時に上手く社員を避難させるためのものです。
そして私は、そのバイク隊の一員に抜擢されております。
1.メンバー選定
上司「ながみえ君。たしか君、バイクで通勤してたよね?」
私「はい」
上司「じゃあ君、バイク隊に入ってくれないか?」
私「バイク隊?」
上司「バイク隊っていうのは今度災害なんちゃら本部に新しく設置される組織だ。地震の時に社員が帰宅できるかどうかを判断するため、会社周辺の道路状態を確認する部隊になる」
つまり地震後に会社の周りをバイクで走り、車が走れそうか、徒歩なら大丈夫か等を判断してこいということです。
正直、やりたくない。
私「上司、問題があります」
上司「何だ?」
私「はい。私のバイクは重いリッターバイクです。小回りもきかず、災害時の出動には不向きかと」
上司「うん、安心しろ。会社の方で原付を用意する。自分のバイクを使えとは言わない」
私「―――」
・・・チッ。どうやら上司も会社も本気の様です。
私「上司、もう一つ問題があります」
上司「何だ?」
私「はい。私は実は会社周辺の道には疎いのです。自分の通勤路以外はよく知りません」
上司「うん、安心しろ。完璧な地図と無線機器を原付に常備しておく。ルート確認会も定期的に実施する」
私「―――」
・・・クソぅ。用意周到な。
まずい流れです。このままではこの面倒な役割を押しつけられてしまう。
私「上司、災害時にむやみに動き回るのは危険かと思います。社員は帰すのではなく、会社内に待機させるべきでは?」
上司「君は、家族が心配だと言う社員を引き留められるのか?」
私「―――」
ダメだ。この上司、事前にいろいろと考えている。遠回しな拒否は通用しない。
私「上司、やりたくないです」
上司「うん、そこを何とか」
私「―――」
2.避難訓練前日
上司「それでは、明日の避難訓練の説明を始める」
バイク隊一同「「「はい」」」
上司「サイレンが鳴ったら、まずはいつもの避難訓練と同じように建屋の外に避難すること。そして「災害なんちゃら本部のメンバーは集合して下さい」という呼びかけに応じて集合してくれ」
ああ、まさか自分がそちら側に行くことになるとは・・・
上司「そして、その他の部隊(怪我人や建屋の確認、火災の消火等)が活動・報告している間に君たちは出動の準備を行ってもらう」
バイクやヘルメット、また無線機器や地図の準備です。
上司「準備ができたらそのまま待機、そして状況に応じて本部長から「バイク隊諸君! 各帰宅ルートの確認に向けて出動せよ!」との指示がでる」
私「え?」
上司「そしたら君たちは「隊員ナンバー○○番! ○○ルート確認に出動します!」と大きな声で宣言してくれ」
私「上司、その掛け声は必要ですか?」
上司「必要だ」
私「―――」
上司「訓練だからと言って気を抜かず、周りにいる全員に聞こえるよう大声で叫んでくれ」
私「―――」
3.避難訓練当日
私「隊員ナンバー○○番! ○○ルート確認に出動します!」
4人のメンバーがそれぞれ宣言し、原付に跨って走り出します。
訓練なので外には出ず、会社の裏まで走って停車。そして無線を取り出します。
私「こちら隊員ナンバー○○番。○○ルート○○地点にてトラックの横転を確認。自動車での通行は不可と判断します。徒歩での通行は可能です」
カンペを読んでいます。
本部長「了解。安全に注意し、速やかに帰還せよ」
私「了解」
別の隊員「こちら隊員ナンバー○○番。○○ルート、確認完了しました。自動車での通行は問題無く可能と判断します」
本部長「了解。速やかに、いや、安全に注意し、速やかに帰還して、せよ」
本部長も慣れていません。
別の隊員「了解」
少し声が震えていました。
4.まとめ
なんか、意味のない部分が結構含まれてません?
それとも形から入ることで何か良い効果があるのでしょうか。
本当に地震が発生したときには冷静に行動できるかが分からないため、普段と違う言葉を使って頭に叩き込んで置く、ということなのかもしれません。
まあ、何にせよ、バイク隊自体は意味のある役割だと思います。
任されたからには、しっかりと役割を果たせるよう、努力するとしましょう。
はぁ・・・